◇ 更年期障害
更年期障害とは、閉経前後に卵巣機能が衰え、エストロゲンが少なくなることによって起こるいろいろな症状全体をさす言葉です。
更年期障害の原因は単純ではなく、エストロゲン欠乏の他にも、本人の性格、社会環境要因、からだの老化など
さまざまな因子が影響しあって原因になります。
● 更年期と女性ホルモン
女性ホルモンは主に卵巣で作られ、エストロゲンとプロゲステロンの2種類があります。
エストロゲン量は女性の若さを保つホルモンです。
20代から30代の方のエストロゲン量は100~120pg(ピコグラム)/mlありますが、40代から閉経期にかけて卵巣の働きが急激に衰えるため、
エストロゲン量は30~50pg/mlになります。閉経の時期を過ぎるとエストロゲンはさらに減少して10pg/ml以下になります。
● 主な更年期障害の症状
上半身のほてり、イライラ、発汗、めまい、息切れ、不眠、頭痛、腰痛、しびれ感などが代表的な症状です。
● 更年期と不眠
睡眠薬を使用すると血圧が改善し低下します。
睡眠薬を使用すると体脂肪が減少したというデータがあります。
更年期障害治療目的で漢方薬を使用した場合に、不眠が改善することも多いです。
● 女性ホルモンの減少によって起こりやすいその他の異常
1. 腟粘膜の委縮による膣炎、性交痛、頻尿など
2. 骨粗しょう症(骨がもろくなって腰痛や骨折が起こります)
3. 脂質異常症(高脂血症)、動脈硬化
● 更年期から老年期の異常
● 当院での治療
1. まずは、生活改善をお勧めします。
バランスのとれた食事、適度な運動、ストレス解消に心がけて下さい。
2. 対症療法:症状に合わせて1~数種類の薬で対応する方法です。
3. ホルモン補充療法
ほてり、発汗、不眠などの専門的には血管運動症状と呼ばれる症状が主な場合に非常によく効きます。
エストロゲンとプロゲステロン製剤を服用あるいは注射する治療法です。
目的
1. 更年期障害の治療(特にほてり、のぼせによく効きます)
2. 骨粗しょう症・動脈硬化・ボケなどの予防・治療
3. 性交痛の改善
4. 肌の老化防止
ホルモン補充療法の内服方法(最近では貼り薬もよく使います)
注意
※ 乳がんや子宮体がんにかかっている方、肝臓の悪い方、心臓の悪い方など、ホルモン補充療法を受けられない方がいらっしゃいます。
※ 長期間、ホルモン補充療法を受ける場合は子宮がん検診、乳がん検診、肝機能検査などの定期検査が必要です。
4. 漢方薬療法
「不定愁訴」とよばれる多彩な症状がある場合に有効で、不眠改善効果や血圧低下効果もあります。
症状が多彩でいわゆる「不定愁訴」とよばれる症状がある方に向いています。
当院では体質に合わせて主に3種類を使いますが、イライラ(怒りっぽい)や落ち込み(うつ症状)が強い場合に応じた漢方薬を使う場合もあります。
産婦人科3大漢方薬は、【当帰芍薬散】【加味逍遥散】【桂枝茯苓丸】です。
3大漢方薬が更年期女性の不眠の改善に有効であり、同時に血圧効果など循環器系に対する効果もあることが示されています。
5. イソフラボン療法
大豆イソフラボンが腸内細菌によって代謝されてできる成分を利用する治療法です。
ホルモン補充療法に抵抗が強い人、普段あまり大豆製品を摂取しない人などに使う予定です。
ホルモン補充療法を中止するまでの移行期や漢方薬との併用など、いろいろ応用できます。